最後の方で紹介しますが、OCIOをベースとしているのでBlender以外でも利用可能です。

※お断り、アーティスト向けに噛み砕いてますので、テクニカルな人にはツッコミ所あること承知の上お読み下さい。
”ん?タイトル的にモデラーとかには関係ないでしょって?大きく関係します。適切なライティングが出来てないと適切なルックデブが出来ません。ってことはシェーダーの特にリフレクション周り、スペキュラの入り方に大きく影響します。ということはモデルにもテクスチャにもシェーダーにも影響します。本来モデルチェックしてる段階で必要なのです。”
まず何故このような物が必要か?について。
フォトリアルな作品を作りたくて光源などを実測値に近く設定したとします。
そしてレンダリングした結果がこれだとします。

完全白飛びしてますねー、色の飽和も出ちゃってます。多くの人はこれをダメなライティングとしてしまう傾向があります。
そこでどうするか?正しいはずだけどライトの明るさが強いんだ!下げようとなりますよね。
じゃまずは太陽3.5/5

いやいや、自己発光照明も強いよ。自己発光物1/10。

はい、そうそう、こういう事だよ。いいね!
そう思った人、ダメです。
確かに白飛びも無くなり、色の飽和もぱっとみ無くなりました。
だけど、右下の照明、照明の見え方は良くなりましたが、光量を落とした事で箱等への照り返しが弱くなてます。
SSSも光量が落ちてちょっと濁り気味です。暗部のメリハリもちょっと悪いですね。ハイライトも弱くなっちゃいました。
これらを改善しようとするとライトをどんどん追加していくか、コンポジットで細かく調整が必要になってしまいます。
特に実写案件でRAW、LOG撮影された案件だとハイが弱くプレートとの馴染みが悪くなってしまいます。
トーンマップ無しのレンダリングビューポート上で見た時いい感じになるようにライティングで調整するのがそもそも間違い!
総じて言えばCG臭い。
何故か?そもそもレンダービューはBlenderにかぎらずリニアデータをsRGBに変換して表示してるだけなのでルックを見るビューとして本来ダメダメなのです。
sRGBのダイナミックレンジは狭すぎる。
人間の目やカメラ、フィルムには高いダイナミックレンジを適切なコントラストで見れるよう適切なトーンマップがされてます。
なのでレンダービューにも本来トーンマップが必要なのです。
実写映画なんかだとLUTが用意されているのでそれらを使うようにすれば良いのですが、自主制作やFullCGだとそうもいきません。
ちなみにUnityやUnreal Engine等のゲームエンジンにはデフォルトである程度画作り込みのトーンマップがかかっていたり用意されてます。
さてどうする?
そこでFilmicです。
詳細仕様は公式ドキュメントを見て下さい>filmic-blender
※公式のGitHubデータを統合したものが2.79搭載のものですが、汎用性を持たせるため少し項目等が異なります。
使い方はColor Managementの項目のViewを切り替えるだけです。(Blender2.79以降)

次にLookから好みのLookを選びます。

では初めの白飛び画像に適応してみましょう。








Base Contrastで見て見ましょう。※Base ContrastがsRGBのコントラストに近くハイのみが調整される。
ハイの値が適切に丸め込まれ、色の飽和も無くなり、見やすいフォトリアルなフィルムルックになっています。
やはりライティングは合っていたと言うことです。

画作りのための色変換は含まれないため少しあっさりとしたルックになります。
Log画像として扱い、ここからグレーディングすることが前提の為です。
EXRでの保存ではViewLUTは適応されないためTIFF等での保存が必要です。
※あくまでチェック用として、実写映画等でのコンポジットはViewLUT無しの元のリニア画像でやるほうが一般的です。
逆にEXRで保存しておけば後から読み直してLookのコントラストの変更等も可能です。
リニア画像であれば外部の別ソフトでレンダリングした画像を読み込んで来てもOKです。
もちろんBlenderのViewLUTはビューポートでも適応されるのでリアルタイムで見ながら適切な値でのライティングが出来ます。

Exposure、GammaはViewLUT前の処理なので調整しても適切に動作します。
Blender内部のcompositing nodeでグレーディングしたい場合、先に書いたようにTIFF等で事前保存しFilmicは使いません。
もう一つ、Viewの切り替えにFilmicとは別にFalse Colourというのがあります。
これもFilmicのオプションで明るさ分布のヒートマップ表示ができます。
全体の明るさ分布の確認や黒つぶれの確認等ができます。


NUKE/MAYAでの利用
FilmicはOCIOのためOCIO対応の他のソフトでも使えます。以下のサイトにNUKEとMAYAでの使い方が簡単に書かれています。
http://www.maximeroz.com/filmic
オススメチュートリアル動画
※どちらもBlender2.79リリース前なので多少違う部分や不要な説明箇所があります。
以上、Filmicの概要と何故必要かの説明でした。
せっかくのフィジカルベースもライティングがダメダメでコンポジットで素材いじくりまくったら意味がない。
トーンマップ(LUT)の考えの有り無しで、ライティングのクオリティは大幅に変わります。是非試してみて下さい。
本来これって全てのレンダービューポートに搭載されていても良い考え方なので、この流れ他のレンダラーにもぜひ広がってほしいですね!
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