
RICOH THETAを購入したのでCGライティング、IBLのための簡易HDRIの作り方をまとめました。(2015/10/01紹介アプリ一つ追加)
上位版のRICOH THETA Sが発表されました。予約しているので届いたら検証したいと思いますが、こちらで紹介しているアプリがそのまま使えないかも(もしかしたらそのまま使えるか?本体の仕様変更等もあるのでアプリのアップデートなのかTHETA S用で別リリースなのか?)と思うのでその辺りも含め届きましたら。(2015/10/01)THETA S情報更新(2015/12/27)公式のブラケット撮影対応追記(2016/12/15)
>201909最新! RICOH THETA Z1のRAWデータとフリーソフトを活用した高品質HDRI作成。データ配布あり。
相手を知る
以下公式からの引用
RICOH THETA(リコー・シータ)とは?
360°が撮れて見渡せる、特別なカメラ
コンパクトな本体の両サイドについた魚眼レンズが、それぞれ180°強の撮影をし、本体内部で2つを繋げ合わせています。 RICOH THETA独自のこの技術により、よりスムーズな360°の閲覧が可能に。 こんなに小さくても、スマートに撮れる全天球カメラです。
撮影時に気づかなかった発見をあなたに
RICOH THETAは、あなたの周囲全てを撮影できる全天球カメラです。構えや構図は必要なく、立てても、横にしても、360°撮影できます。あなたは、ただボタンを押すだけ。
撮影後は、全天球イメージを、上下左右にぐるぐる動かして、そのとき気づかなかった発見をお楽しみください。
ってカメラですがサードパーティのアプリを使うことでブラケット撮影ができるのでHDRIを作る事ができます。
まずRICOH THETAのスペックをHDRI撮影に必要な部分を抜粋して見てみましょう。(検証モデル m15)
価格 / 3.4万前後
解像度 / 3584×1792
F値 / f2.1
ISO感度 / ISO100~1600
シャッタースピード / 1/8000秒~1/7.5秒
露出補正 / -2.0~+2.0EV 1/3EVステップ
画像ファイル形式 / JPEG(Exif Ver2.3) DCF2.0準拠
保存容量 / 内部4G(約1200枚)、またスマートフォンへの転送も可
電池寿命 / 200枚(microUSB)、モバイルバッテリー等で充電可。
RICOH THETA Sでの変更点(ざっくりと)
解像度アップ>5376×2688
長時間露光可能に
その他スペックは公式サイトを>https://theta360.com/ja/about/theta/
前後に付いている2つのレンズ(カメラ)で撮影した画像を自動処理でスティッチしてJPEGのパノラマ(Equirectangular(正距円筒図法))で保存されます。この処理の関係もあってかRAWでは保存されません。APIもアプリ開発の部分しか公開されていないので。
スペックを知った上でのHDRIを作る上での欠点と利点
・欠点
RAWが撮れない
Jpegから変換するので精度が低い
ISOノイズ、圧縮ノイズ等多めなので色精度はそこまで出せない
元の諧調が低いためHDRIにした時画像が荒れやすい(変換ソフトにもよる)
解像度が3584×1792と低め(THETA Sでは5376×2688にアップ解像感もあっぷ)
f/2.1(絞り)固定なので絞れない
光源の明るさを収め切れない(一眼でも撮影の仕方によっては同じ)
※1番暗い設定、ISO100、1/8000秒、-2.0EVの設定で撮影してもEV=約17相当なので晴天時の適正露出値に近い。以下参考画像

・利点
ステッチ(パノラマ化)作業が不要
コストが掛からない
コンパクトなので通常撮影しにくい狭い場所など様々な場所で撮影出来る
カバンに入れておいて面白い場所があればいつでも撮影出来る。
遠隔で撮影できる(スマホやタブレットからWifi接続で)ので自分が写り込まないような撮影も簡単
短時間で撮影できる(10枚撮っても設置込みで1分)
だれでも扱いやすい
手軽さの割にはそこそこ使える物が作れる
2016/12/15 THETA Sのみですがブラケット撮影に対応しました。
サードパーティ製アプリより撮影が早いです。(撮影間隔約6秒)
アプリと接続後、設定画面から>撮影方法>マルチブラケット>完了
設定は13枚まで設定できます。設定項目はシャッタースピード、ISO、WB、の3項目でライブビューでプレビューも表示されます。

撮影アプリ
撮影にはアプリを使います。書いている時点で自分が見つけている使えそうなアプリは4つです。
・1つ目 (THETA S対応済み)
HDR 360 Bracket Pro for Ricoh Theta (iOS)
http://www.bradherman.com/home/hdr-360-bracket-pro-for-ricoh-theta-vfx-vr-and-gamedev
\6000/$49.99と高いので試してません。
最大9枚のイメージを自動撮影。
ホワイトバランスの設定が出来る点は良い。
HDRI化は撮影後取り込んで各自別ソフトでという仕様。
VFXアーティスト向けに作られているが機能的にはもっと安くて良いのでは?と思う。
・2つ目
360HDR (iOS)
http://360hdr.minoaimino.com/
作者は日本の方で無料アプリ。撮影からHDRI化まで全自動なのが良い。
ただ画像4枚でスマホ端末内でHDRI化するので少し精度は低め。バージョンが上がり細かくカスタム出来ると良いかも。
撮影画像をスマホへ転送、HDRI変換するため少し時間がかかる。
変換後はプレビュー用のHDRイメージ(.png)とHDRIのみスマホには残る。オリジナル画像はTHETA本体にのみ残る。
HDRI(.hdr)はスマホのアプリ内に保存されるのでPCにつなげで取り込む必要がある。
ホワイトバランスの設定はExIFデータを見たところオート設定。
シャッター音はスタート時のみ。
・3つ目 (THETA S対応済み)
HDR for Ricoh Theta Cameras (iOS、Android)※こっちはTHETA S非対応なので間違って買わないよう注意です!動画下リンク
http://www.tequnique.com/thetahdr
THETA S対応版少し値上げで別アプリとしてリリースされました。
HDR for Ricoh Theta S
Android(398円)>https://play.google.com/store/apps/details?id=com.teapps.thetashdr
iOS(480円) >https://itunes.apple.com/jp/app/hdr-for-ricoh-theta-s/id1068236717?mt=8
今のところこれをメインに使用。
Androidにも対応(iOS版より機能が豊富)
\360/$2.99(iOS)、\239(Android)と安い。
任意のISO、シャッタースピード、露出で最大12枚(iOS)or24枚(Android)自動撮影出来る。
Android版はプレビュー付き
ホワイトバランスの設定はExIFデータを見たところオート設定。(THETA S版は切り替えが可能)
端末への画像転送は任意。
シャッター音のありなしが選べる。
iPadとAndroidのスマホで試しましたがAndroidの方が機能的に良いです。後のバージョンアップでiOS版も?
Android版はHDRというチェックがありますが最近のスマホで搭載されているHDR機能と同等のもの使用画像は撮影後任意の3枚。
以下THETA S対応版について(検証中Android版)
ホワイトバランスが選べるようになった。
シャッタースピードが1/6400~60と長時間露光が出来るように(本体の仕様変更によるアップですね!)
撮影時間が少し遅くなった?解像度アップによりサムネ生成に時間がかかっている?
・4つ目2015/10追加
Simple HDR(iOS)
\1200/$9.99
http://www.builtlight.org/simple-hdr/
How To Make Homemade 360 HDRIs in Seconds With Theta 360 and Simple HDR from Greyscalegorilla on Vimeo.
価格が微妙なので未検証。
HDRI化は撮影後取り込んで各自別ソフトにて。
撮影設定は用意されている2つのプリセット(3枚か6枚)のみのようです。
撮影
当然複数枚の画像を撮影するのでどこかに置いたり、三脚に固定したり、して動かさない必要があります。
アプリ内で表示する時は記録されている本体の傾き情報を元に水平を出してくれるみたいですが、撮影画像自体は補正されてないので極力水平にしておいた方が後処理としては楽かと思います。
ちゃんと撮影するなら簡易三脚付きの一脚等が三脚自体の映り込みも少なく、持ち運びもし易いので良いと思います。


画像はダイソーで購入した300円の自撮り棒に同じく100均や雑貨屋で売っている三脚を付けたコンパクトな簡易撮影セットです。風に弱いのが欠点ですがコンパクトです。
あと光源の調整参考のためカラーチャート、リファレンスオブジェクト(グレーボールなど)は撮影しておいた方が良いです。
本番HDRIに入れ込みたくない場合別途有り無しで撮影するか、公式アプリを使いフルオート設定で1枚撮影しておいても良いと思います。
あとはアプリをWifiで接続して撮影するだけです。
光源とカメラの向きによりまれにステッチ処理で繋ぎ目が顕著に出るみたいです。
今回は3つ目のアプリを使って以下の設定で10枚撮影してます。(設定、枚数は検証時もので推奨ではありません)
汎用性を考えてカメラの最大値と最小値までを約EV2ステップぐらいの設定です。
HDRI化する時環境によっていらない画像(完全な白飛び等)は場合によって照明精度が悪くなるため使いません。
ISO100 -2EV 1/8000 EV=17
ISO100 0EV 1/4000 EV=14
ISO100 0EV 1/1000 EV=12
ISO100 0EV 1/250 EV=10
ISO100 0EV 1/60 EV=8
ISO100 0EV 1/15 EV=6
ISO100 1EV 1/7.5 EV=4
ISO400 1EV 1/7.5 EV=2
ISO800 2EV 1/7.5 EV=0
ISO1600 2EV 1/7.5 EV=-1
Androidの画面

HDRI化
Photoshop、HDRShop、PTGuiなど試しましたがどれもいまいちなクオリティでした。
そこで新たなソフトを捜してみたところsIBLの記事でも紹介されていた以下のソフトが非常に良かったです。
Photomatix Pro
http://www.hdrsoft.com/jp/
実はこのソフト、体験版でも.hdr/.exrの保存であれば透かしが入らないので実質フルで試せます。※公式にもトーンマッピング等の加工後の画像に透かしが入るとの記述。業務利用であれば購入しましょうね。
使い方も簡単でなんといってもノイズ除去ができること、仕上がりが非常にきれいなことが上げられます。
また、バッチ処理もできるので複数の場所やカットで撮影したものを一括処理出来ます。
使用手順
1.読み込み
ブラケット画像の読み込みから取り込んだ画像を読み込む(ドラッグアンドドロップでもOK)、OKを押して次の画面へ
※”32bitのみ処理のイメージを表示”にチェックを入れることでトーンマッピング画面が表示されずそのまま保存まで行けます。

2.前処理オプション
基本はノイズリダクションのみチェックを入れる。THETAは比較的ノイズが多いので処理時間は長くなりますが、”元画像すべてにかける”にしておくことでなめらかな画像を作れます。
すでにパノラマ変換されているため”画像のズレを調整”、”色収差を減らす”はあまり効果が無いと思います。
”ゴースト除去ツールを使用”では動く人物等のエラーを軽減できます。統合処理後操作画面が出ます。

3.保存
HDR合成をする。のチェックを押すと以下のように統合された画像が出来ます。(ビューLutがかかってないのでリニアの暗い画像ですが問題ありません)
あとは画像の保存。ワークフローショートカットのイメージを保存。または、ファイル>名前を付けて保存から.hdrか.exrで保存します。

4.調整
Photomatix ProではHDRIのための画像調整があまりできないのでHDRShopやNuke等で最終調整する必要があります。
露出値やホワイトバランス、光源追加、等を行い完成です。
先にも述べているように強い光源は収まりきらないので確実に後処理で足すか、3DCG上でライトを追加する必要があります。
以前の記事のsIBLのススメで書いているsIBL EditとsIBLを使うとライトの位置は合わせやすいです。その他スクリプト等でもそう言ったものがありますね。
そして以下がレンダリング(Blender Cycles)した結果です。カラーチャートを見ても大体満足出来る結果かなと思います。やはり色精度は少し悪いです。
室内例。ホワイトバランスの調整のみ、グレーボールを見ての通りトップの光源色が少し赤に振ってしまっているのとブラックレベルのズレが多少。この辺りはある程度ならコンプ作業で調整できますね。全体のライティングのバランスとしては悪く無いかと思います。

屋外例。別途Sunライトをグレーボールと影のバランスを見ながら簡単に追加しています。

まとめ
まだ検証中な部分もあるのでひとますこの辺りで。
ちなみに普通に一眼でRAW撮影して同じ手順で作った物と簡単に比べて見ましたが、色精度等はもちろん落ちますが、輝度(光源の明るさも収まっていれば)のバランス等は大体近い値に収まってました。
VFXやっている会社だと一眼+魚眼(広角レンズ)+パノラマ雲台(自動だと楽)+ブラケット撮影コントローラーなどなど揃えるのは当然ですがどれも高い機材なので趣味や自主制作ではそこそこ敷居が高いです。ゲームエンジン等のはやりもあるのでこれだけ簡単にHDRIが撮れるのは良いと思います。
以前魚眼コンバーターを使ったHDRIの作り方も書きましたがそれよりもっと手軽に作れます。もちろん一眼でRAWで撮る分あちらの方が精度は良いです。
また業務利用として考えても、メインは一眼で撮りつつも押さえとしてTHETAで撮っておくとか、撮影時間が限られている時とかに使えますね。他に全くのカメラ素人の人に撮影をお願いせざるを得ない時でもレクチャーが簡単にできるので良いかもしれません。
動画も撮影できるので走行する車のリフレクションとか使えそうですが解像度的にバックプレート等には出来ないですねぇ。
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