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3D、コンポジット、マッチムーブ、カメラ、撮影について色々書きます。

自主制作のための簡易HDRIの作成

自主制作のための簡易HDRIの作成ということで簡単に作れるIBL用のHDRIのTIPS紹介です。

HDRI2_00.jpg

・なぜタイトルを"自主制作のための"としているか?
まずかなり簡易的なものなので解像度含め精度的には落ちる。
手順紹介も簡略化しているため今話題のシーンリニアワークフロー等を考えると精度向上のための調整不足。

・では利点は?
慣れれば撮影、編集込みで10分ぐらいでそこそこの精度のHDRIを簡単に作れる
機材もシンプルなのでかさばらない、人によっては1万ほどの追加投資しかいらない。

作り方は以下から

注意!以下手法はすべて自己流です。

本来きちんとした高解像度なHDRIを作ろうと思うと、パノラマ撮影用に色々機材を揃える必要があります。
ちょっと撮ってみたいにしてはきちんと揃えると機材だけで10数万かかってしまいます。
又、IBLのライティング用やちょっとしたリフレクション用であればそもそもそこまで解像度は要りません。

今回の手法ではミラーボールを元に作るより精度は高く、簡単に作れます。
※学生の頃に書いているミラーボールを使ったHDRIの記事>HDRI画像を作ってIBL~


必要なもの
カメラ(レンズ交換式一眼レフ)
画角180°魚眼レンズ コンバーター(又は全周魚眼レンズ)
Photoshop(使用バージョンCC 64bit)※CCでない場合AEを使うことでも可能
レリーズ(あると便利)
HDRI2_01.jpg




先に”魚眼レンズ コンバーター”について
自分が購入したのはこちらです※購入時¥9,975-
画角180° 0.25X FISHEYE LENS 【 ビデオカメラ & 一眼レフ 用 】 フィッシュアイ レンズ ( 魚眼レンズ コンバーター ) フィルター径:37mm 43mm 49mm 52mm 55mm 58mm用(別売のアジャスターリングを使用すれば、その他のフィルター径にも対応可)​

アマゾンで入荷予定無しになってるので楽天の同製品のリンク(公式ショップ)
http://item.rakuten.co.jp/revelroyal/nordward_025fisheye/

メーカーページhttp://www.fizzbearings.com/nordward/products.html

これはレンズコンバーターなのでレンズフィルターの箇所に着けることが出来ます。
これはスケボー屋さんがなぜか売ってるレンズですが、色収差が少なくほんとに画角180°あるのでかなり良いです。
普通に魚眼としても使え、下部分だけでマクロズームレンズにもなります。
ですがこれの必要はなく必要なスペックとしては画角約180°である事です。
全周魚眼であれば普通の魚眼レンズでも問題無いですが中々数が少ないのと高いですよね。
HDRIで撮影するには全周魚眼である必要があります。以下の通り円で全体が映る事です。
HDRI2_04.jpg


自分の手持ちカメラはEOS kiss3なのでこのコンバーターで全周撮影するために17mmで撮影しています。(SIGMA17-70)
ステップダウンリングをかませてつけています。
HDRI2_03.jpg
これでちゃんと画角180°あるのが不思議ですよね(当然ながら正しくは若干足りてません)。




さて撮影方法に関して。大前提としてRAW撮影であること。
本来ノーダルポイントに合わせたカメラを回しながら複数枚撮影していきますが、
今回は簡易としているので、上に向けて撮影するだけです。
これはレンズを180°全周魚眼にしているから可能なことです!
この場合半球のHDRIとなります。CG内で地面を制作する場合基本的にこれでも問題無いです。
下にも向けて撮影した場合全球HDRIになります。

三脚に固定するのが良いですが今回は簡単に撮るため、はじめの画像のように一脚をつけ腕を伸ばしてレリーズで撮影しています。
ベースのレンズが望遠レンズの場合伸びたり縮んだりしないよう注意が必要です。
マスキングテープなどで固定をしておけばミスを減らせます。
水平は撮ったほうが良いですが目視でもそこまで大きなズレは起きないと思います。


カメラ設定
正しい撮影方法としては以下のようにシャッタースピードを2~5ステップおきに変えて6~15枚くらい撮影が理想です。
HDRI2_06.jpg

もっと簡易的にするならオートブラケット撮影(AEB撮影Canon、ステップ撮影)で撮影でも良いです。
※自動的にシャッタースピード又は絞りを変えて指定ステップの露出で撮影されます。
カメラによって撮影ができる+-の値が変わります。今回使用しているカメラでは+-2なので実際もう少し欲しいところです。
今回は+-2なのでの合計3枚、上下撮影したものが以下の画像です。
HDRI2_05.jpg


ただ枚数を撮るのではなく、撮影時の光源の特に明るい部分の情報が大事になります。
以下のように1番露出を低く撮影したデータで光源が見えないくらいに映っていると簡易であってもよりよいHDRIが作れます。(影が正しくでる)
HDRI2_07.jpgHDRI2_08.jpg

なので特に屋外で撮影する場合極力低い露出で撮れる設定を決めてから撮影を始めたほうが良いです。
(明るくするのはシャッタースピードを下げればいいだけなので)




加工
多くの場合パノラマ加工ソフトやHDRShopのようなソフトを使う形になりますが、
今回はPhotoshopだけでできるやり方を紹介します。使用バージョンはCCです。
※古いバージョンだと16bit、32bitでの作業時制限が出るため以下の方法で出来ない可能性があります。
その場合HDRShop等を使って下さい。

撮影したRAWを整理してまとめます。


Photoshopを立ち上げてファイル>自動処理>HDR Proに統合
から撮影したデータを選びます。これによりRAWに含まれる情報を損なうこと無くHDR化出来ます。
HDRI2_09.jpg

画像を選択(まずは上向き3枚)
HDRI2_10.jpg

HDRI2_11.jpg
手持ち撮影で若干のずれがあるので"ゴーストを除去"にチェック左下のサムネで基準画像を選ぶ。(暗めの画像を選んだほうがきれいな状態になる。明るい画像の場合階調破綻が起きやすくなる)
HDRI2_12.jpg
"白点プレビュー設定"はいじる必要なし(後ほど説明)
"Addbe Camera Rawでのトーニングを完了"のチェックは入れない

OKを押して完了


表示調整
表示>32bitプレビューオプション を開く露光量の部分に値が入ってると思うので0にする。
HDRI2_13.jpg
先ほどの"白点プレビュー設定"の値がここにきている。
※あくまでビュー上の見え方なのでHDRIで書きだした時に影響はしないが作業時のルックと最終ルックが変わってしまうため0にリセットする。

加えて、表示>色の校正 にチェックが入っている場合外しておく

次にレイヤーをスマートオブジェクトに変換する。
HDRI2_27.jpg

編集>プロファイルの指定 を開く
プロファイルが以下のようになっていると思うので"作業用 RGB"に変更する
HDRI2_23.jpg
HDRI2_24.jpg

※32bitモードではプロファイルの変換が出来ないためスマートオブジェクトに変換して色が変わるのを防ぎます。
これらの作業をすることで書きだしたHDRIとPhotoshop上の色のズレがなくなります。
これをしないと書き出し時プロファイルの変換がされるため書きだしたHDRの色味が変わってしまいます。

後の作業が重たいだけなのでレイヤーをラスタライズ
HDRI2_28.jpg


出来たHDR画像をトリミングします。
1:1の比率で円形の縁を調整してトリミング
HDRI2_14.jpg


そしてこれを展開します。
フィルター>変形>極座標>極座標を直交座標に
※64bitモードでないとメモリ不足になる可能性があります。CS6未テストCS5では出来ません。
 ③以降の作業はAEを使うことでPhotoshopCCが無くても作業できます。
HDRI2_15.jpgHDRI2_16.jpg
出来た画像が以下の状態
HDRI2_17.jpg


画像解像度を変更
今回は2048×512に変更(4:1)
HDRI2_18.jpg
すると以下の状態に
HDRI2_19.jpg

このままでは上半分なのでカンバスサイズの変更
2048×1024(2:1)
HDRI2_20.jpg

この状態でもIBLのライティングには使えます。
特に地面を置く場合下からの光源はその地面からの二次反射になるので下半分はいらないです。
HDRI2_21.jpg
※BGカラーは黒にしないと余計な光源となってしまいます。


仕上げ
必要に応じて下半分も⑤までの作業をして⑥の画像に合成します。(下向きの場合上下反転しているので180°回転させる)
基本的に上記の手順を守っていれば上下で露出値も一致します。もしずれる場合は調整して下さい。
工程をアクション登録しておくことでより効率的に作業できます。

全体の露出調整、必要によっては色調整をします。

これでIBL用のHDRIの完成です!
HDRI2_22.jpg
テストレンダー結果(Blender Cycles)
HDRI2_25.jpg


必要に応じてマスクで囲い、編集>塗りつぶし>コンテンツに応じた塗りつぶし で不要なものをクリーンアップします。
トップ画像は上半分だけ枚数多めに撮影した画像からHDR化して、映り込んでいる足等をクリーンアップしたものです。

同じように作った別画像
HDRI2_29.jpg
テストレンダー結果(Blender Cycles)
HDRI2_26.jpg





よりよく作るためのTIPS
・カラーチャートを撮影しておき色味、露出を基準とする。
・グレーボール等リファレンス素材を多く撮影しておく事でレンダリングテストで正しくできているか確認できる。
以前の記事>続・グレーボールについて考える

・屋外で晴天の場合太陽の強度を調整する。(これにより影のでかたがより正しくなります。)
>どうしても少ない数の写真では太陽の強度が足りないため太陽の部分をマスクで囲いそこだけ露出を上げる
情報パネルを見ながら夏の晴天下であれば参考値として100000位、季節や時間帯によって強度は変わるため結果を見ながら調整して下さい。(正しい値になることでCG上ではカメラのフィジカル設定が必須になってきます)
HDRI2_30.jpg
VrayのVraySunは大体正しい値になっているのでHDRとして書き出して太陽のみ置き換え等でもかなり結果が良くなります。

又はNDフィルター等を使いより明るさを絞る(HDR化する時に写真のメタデータが使われるため注意が必要!)

・青空の場合きちんと作らないとどうしても青被りしやすいHDRIになってしまいます。(この辺りは自分もまだ色々検証中)
・自分は使っていませんがプログラム可能なレリーズ等外部コントローラーを使うことで撮影を半自動化出来ます。


最後に、初めに言っている通り自主制作向けの簡易的なHDRIです。
ブログ用にPhotoshopだけで完結できるよう手順整理、簡略化したものです。
業務使用レベル(問題の起きないもの)にするためにはより細かい調整をする必要があります。
Photoshopは内部でどうしてもクリエイティブな色校正が入ってしまいます。HDR精度として検証してませんので
保証は出来ません。自己責任でお願いします。
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コメント

手順を分かりやすく書いて頂いていて、ありがたいです。

AECS5の極座標では、PSの変換みたいにはならないようでした。

  • 2014/05/23(金) 16:48:00 |
  • URL |
  • 通 #mQop/nM.
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

ありがとうございます。
CS5でもできる事テストしているので変換できると思います。

  • 2014/05/27(火) 03:48:10 |
  • URL |
  • kurono73 #-
  • [ 編集 ]

できるのですね。お返事ありがとうございます。

AEだと下の方が伸びてしまったので。私のやり方がマズイみたいですね。

  • 2014/05/29(木) 17:49:08 |
  • URL |
  • 通 #mQop/nM.
  • [ 編集 ]

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